乙女と森野熊さん
正しいとかは、もうよくわからない。
だから今思うことは伝えるだけ伝えよう。その一心だった。
真奈美はじっと私を見ていて最後苦しそうに顔を歪ませ、俯いた。
しばらく真奈美は俯いたままで何も言うことは無く、私もただ黙って真奈美に寄り添う。今の私にはそれしか出来なかった。
「熊さん」
真奈美が、掠れた声で俯きがちに声を出した。それも突然熊さんを呼んだので私は戸惑ってしまう。
「パパ、どうなるんですか?さっき逮捕されたんですよね」
私も後ろを振り向き、壁にもたれかかったまま腕を組んでずっと何も話さなかった熊さんが、手をほどき一歩前に出た。
「現時点ではナイフ所持による銃刀法違反で逮捕した。
だが一番問題なのは乙女ちゃん達にナイフで危害を加えようとしたことだ。
殺意を持っていたかも大きく影響する。
そして佐藤さんや家族にどういうことをしていたのかも。
さっき話していた無理心中を強要していたことも問題になるだろう。
だがここで聞いていたことは事情聴取によるものではない。だから俺が聞いただけでは君の父親の罪には直結しない」
「それは、私が知ってることを正直に警察の人に話せば、パパの罪は重くなると言うことですか?」
真奈美が震える声で熊さんに言っても、熊さんの表情は変わらない。