乙女と森野熊さん
「下手に水面下で作られて、山浦さんのあんな写真やこんな映像とかのプライバシーが流されたりしたらまずいでしょ?特にネットで。
山浦さんが警察官の独身男性と二人きりで住んでいる事情を一年生はほとんど知らないし、下手な噂をされるのはリスクだと思う。
だけど公式のファンクラブを作って、そこで僕が率先してルール作りをすればある程度彼らの行動を抑えられる。
公式のものなら山浦さんが来てくれて握手会やサイン会もあるとなると、裏でこっそり少人数でやるより公式の方が良いってなるしさ」
途中までやはり先輩って凄いところあるなって頷きながら思っていたけど最後の本音で駄目になった。返せ、この感動。
「残念だが秋山の意見に賛成だ。気になる点もあるが結局は山浦さんを守るためにもなる」
「小林先輩優しい」
「え、僕は?そこ僕が褒められるとこじゃないの?!」
小型犬がくーんくーん言っている感じだが放置して私は続ける。
「しかし、たかがファンクラブの話しが何故生徒会に来るんです?私がいるからですか?」
「『部』としての申請だったからだ。ファンクラブという部活の申請だ」
「いやー今年の一年って行動力あるよね、感心感心」
小林先輩の説明に秋山先輩が笑顔で答えている。そうか、私のための部活が出来るのか。学校創立以来初めての予感。
「で、申請を受けただけではなく、秋山先輩が部長になって正式に部として出来上がったと」
「そうそう。大丈夫、山浦さんは部員じゃ無いよ、あがめ奉る存在だから」
私に向かって手を合わせた秋山先輩を無視し顔に手を当てる。
既に決まったことを私が覆すのは無理だし、嬉しそうにしていた女の子達が悲しむのは辛い。
私は再度大きくため息をついて肩を落とした。