乙女と森野熊さん

一緒に住むようになって最初の頃、夜に若い男性が道に迷っていて道案内を頼まれたから案内したと熊さんに話したら眉間に皺を寄せて、空手有段者だった女子大生が比叡山で殺害された事件を詳しく、それは詳しく話してくれ、わかったね?と無表情で確認された時には、私は恐怖しながら無言で頷いた。

その後も私が男子に説教したとか痴漢に遭っていた女の子を助けたという話しをすると、熊さんから怖い事件の話しをされるのだ。

無表情で恐ろしい事件の話を聞くのは、ただ怒られるよりダメージがある。

でもいつも同じような事をやって、何度も熊さん的な説教をされてしまう。


「そういえば身体測定は終わったんだろう、身長は何センチになったんだ?」


「もうお肉なしね」


私がすっ、と真顔になってかなり減ったお肉の皿を片付けようとしたら、急いで熊さんはその皿を自分の前に引っ張った。
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