乙女と森野熊さん
「大福とか年寄り臭い」
嫌そうに言う割にしっかりと受け取ったのは一年の高木陽人(はると)くん。
短い髪のつり目でやんちゃな感じだが、学年でも成績はトップクラス、特に数学など理数が強く一年というのに会計に抜擢された。
パソコン部にも所属し自前でパソコンを作ったり難しいプログラミングもこなすとか既に大学の問題を解いているなんて噂があるが、彼が勉強しているところをみたことがないのでわからない。
生徒会長の秋山先輩が指名した、こんなメンバー五名で生徒会は成り立っている。
色々とバラバラな性格だが不思議と居心地が良い。
しいていえば私より身長の高いのが小林先輩のみというのが悲しいが、そのうち高木君が私の身長を軽く抜かすことを祈ろう。
長テーブルを二列合わせてそれを囲むように皆で座り、大福とお茶で会議はスタートした。
「さて次の議題だが、今週の目安箱には、本村先生が女子生徒に対し不用意にボディタッチしてくるという苦情が数件入っていた。
時間的にも数としてもさすがに生徒会として動く頃合いだな」
「本村先生については私も聞いています。
問題は目安箱だと匿名だけで、私に話した子達も名乗るのは嫌でしょうし。
目撃した人がいないから、先生に知らぬ存ぜぬで通される可能性が高いですよね」
小林先輩の言葉に私が意見を言う。国語担当の本村先生は50過ぎの独身男性教師だが、女子生徒に対するセクハラは有名だ。
他の教員だって把握しているはずなのに表だって注意したという話しは聞かない。
無駄に年を取って嫌がらせをしてくるかもしれない相手など、誰も関わりたくないのだろう。