乙女と森野熊さん
「あの、私、背中撫でられたことあります」
遠慮がちに青山さんが手を上げたのを見て、隣に座っている私はキッとなった。
「本当?!いつ?どこで?!」
「えぇっと、放課後クラスのプリントを国語準備室に持って行ったら本村先生しかいなくて、置いて帰ろうとドア開けようとしたときに後ろから、お疲れ様って撫でられたんです」
「うっわ、キモ」
高木君が椅子にあぐらをかいてマグカップを持ちながら心底軽蔑するような顔をして大福にかぶりついているが同感だ。ぞっとする。
「山浦さん、顔、顔」
戦闘態勢になって殺気立っていた私を、秋山先輩がおろおろとなだめた。