乙女と森野熊さん

「頑張れよ」


ドアを向いていた私のすぐ背後から声がして振り返ろうとしたとき、目の前のドアが開く。

そこには秋山先輩と小林先輩が立っていて、高木君がスマホをこちらに向けていた。


「本村先生、女子生徒にセクハラはいけませんねぇ」


顔を左右にふり、秋山先輩は悲しげな顔をしている。


「な、何だ急に!」


わたしのすぐ背中にいた本村が慌てている。あぁこいつ私に何かしようとしてたのか。

でも未遂では何とでも言い逃れできる。いくら今スマホで録画したって無駄だ。


「とりあえず中に入りますね」


秋山先輩がそういうと国語準備室に三人が入って私の前に立つとドアの間に私は挟まれるような形になり、三人の間から本村を見るがその顔は明らかに動揺している。


「セクハラ?山浦にか?触ったりしてないよな?山浦がそれは一番わかってるよな?」


本村が私を証人にさせるかのような事を早口で聞いてきて私が口を開けずにいると、小林先輩がおもむろに手に持っていた国語辞典を開く。

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