乙女と森野熊さん


「セクシャルハラスメントとは、性的いやがらせ。特に、職場や学校などで行われる性的・差別的な言動をいう。セクハラ。だそうです」


平坦なその声に、本村が睨み付ける。


「先生、こーんなのもあるって知ってました?」


秋山先輩が持っていた紙をひらひらとかざす。


「これ、法務省が出している企業向けの人権研修シリーズにあるセクシャルハラスメントについてです。

なになに?ここにはですね、環境型セクシャルハラスメントの例として、恋愛経験を執拗に尋ねるってのもあります。

チェックリストには、女性の身体的特徴を話題にするってのもありますね。

そう言えば、山浦さんの肌がどうとか、髪がどうとか言ってましたっけ。

交際についてもかなりしつこく聞いていましたね、それに、家族についても」


秋山先輩は本村に言われたことを私に確認することも無く断言するように言って、本村の顔が青ざめたり赤くなったりしている。


「何でそんな詳しく知ってるかというと、ここに隠しカメラがあるからです!

小型で高性能、恐ろしい時代になった物ですよね~。

録画機能付きですので先生の行動も言動もしっかりバッチリです、ご安心下さい」


最後ハートでもつきそうなほど楽しそうに秋山先輩は話し、本村は必死に部屋の中を見回している。


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