乙女と森野熊さん
第三章 乙女、警察署に連行される
じりじりじりと容赦なく日差しが照りつける。
近くの公園からは蝉の大合唱が聞こえて、そのうちマンションのベランダにセミ爆弾が落ちている日も増えそうだ。
ちなみにセミ爆弾とは裏返っている蝉のことで、死んでるのかな、大丈夫かな、とビクビク近づくと不意打ちでもの凄い音で跳ね回って私が心の中で絶叫している隙に飛び去っていく恐ろしいシロモノだ。
玄関先に落ちていても私には辛い。虫が、苦手なのだ。
「あっついねぇ」
「ほんとにねぇ」
隣を歩く三井りんごちゃんが小柄な身体には似合わない柔道着の入った大きな鞄を持って何度目かの同じ言葉を言ったので、私も何度目かの同じ返事を返す。
今日は髪の毛をポニーテールにしてシンプルなTシャツに膝下くらいのジーンズ、サンダルを履きたかったけど畳の上に上がるので短い靴下とスポーツシューズだが暑い。
今日は日曜日。日曜日の朝は合気道の練習で、私は近くの道場に通っている。
りんごちゃんはショートカットの中学三年生で身長は155センチくらい。可愛い。
たまたま道場の見学会に母親と来ていたりんごちゃんは、私を見て入るのを決めてくれた。