乙女と森野熊さん
既にご両親には伝えて向かっているとのことで一安心だが、こちらはねちねちと状況を聞かれてうんざりしていた。
どこでどんな風に男と出会って、どこを走って、男をどんな風に倒したかとか。
あげく私が合気道有段者だと知ったおじさん警察官は、まるで私が男を暴行したみたいに言ってきた。意味がわからない。
「以上、間違いないかな?」
「はい」
入力した物を若い警察官が読み上げて、内容に間違いが無いか聞いてきた。
直したいところは多々あるがもうめんどくさい。やっと帰れるのだろう。疲れた。
そんな私を年配の警察官が、
「ところで、ご両親に連絡するから連絡先を教えなさい」
と言ってきた。なんでずっと上から目線なの、このおっさん。
「何を連絡するんですか?」
「事情をだよ」
馬鹿にしたような反応にカチンとくる。
「自分から話します。これで終わりなら帰ります」
席を立とうとしたら、こら、学生、とおっさんが言った。
は?さっきから名前もフルネームで確認しておいてその呼び方はなんだこのハゲ。