乙女と森野熊さん
「言えない事情があるんだろう?何も無ければ言えるはずだ」
「まるで私が何か犯罪でもやったかのような言い方ですね」
決めつけたような言い方に私の目が据わってくる。
「夏だからな、女子高生なんてのは色々開放的になるから親に言えないんだろう」
本村と似た臭いを感じる、相手は警察官なのに。
警察官は熊さんくらいしかしらなかったし、近くの交番のお巡りさんもいい人なのでこんなのもいるのか。
「また事情聞くと思うし急に警察から連絡あると親御さんも驚くだろうから、ね」
若い警察官が隣のおっさんの様子をうかがうように言った。
「両親は交通事故で死んでいません」
私が表情も無く立ったままそう言うと、若い警察官が戸惑ったような表情をしたがおっさんの表情は小馬鹿にしたようなままだ。
「なら祖父母とかいるだろう?誰が保護者だ?」
おっさんは絶対連絡をしたいようだ。私はイライラがたまって仕方ない。
「います。親戚の警察官が保護者です」
今度は二人して顔を合わせた。
熊さんに迷惑をかけることはしたくなかったが、これならもう連絡もなく帰れると思ったのは甘かった。