乙女と森野熊さん
私は部屋に入って壁に掛けてある時計を確認すれば既に夜の七時を回っている。
すぐに熊さんに電話すると、待ち構えていたように電話に熊さんが出て、あと一時間くらいで着くからと言われた。
今のうちにお風呂の準備をしておこう。私はバスルームに向かった。
りんごちゃんからメールが届いていることに気が付き中を読むと、早くに自宅に戻り私を心配してくれていたようだ。
警察でグダグダ付き合わされて帰るのが今になったと謝罪して、また来週会おうねと返信した。
熊さんが言っていた到着時間より早くドアのチャイムが鳴り、鍵が開く。
「お帰りなさい」
「ただいま」
もそっと玄関に入ってきた熊さんの顔を見て自然と笑みが浮かぶ。
そんな熊さんの片手には有名ケーキ店の紙袋。受け取ろうとしたら熊さんが私をじっと見る。