乙女と森野熊さん
湯船に薔薇の絵の描かれたローズの香りを入れると大人っぽい香りがお風呂場の中に広がって、思い切り香りを嗅ぐと肩から力が抜けた。
こんなにも自分の身体は強ばっていたのか。
家に熊さんがいる。とても安心だ。
男性警察官というのは柔道が必須だそうで、だから仕方なく柔道をするらしいが、熊さんの身体を見れば大抵の人間は戦おうなんて思わないだろう。
実は家にいるとき自分の部屋で身体を鍛えているのを知っている。
別にリビングで筋トレしても良いのに、汗臭くなることを気にしてくれているのは申し訳ない。
昔は私の方がもしかしたら熊さんより自分が強くないだろうか、なんて思ってしまうこともあったけれどおそらく熊さんはかなり強い。
だけど今回の男くらいなら楽勝だと思ったのに、足首を掴まれたとき思わず動けなかった。
何のために長い間合気道をしてきたのだろう。