乙女と森野熊さん
「事故や辛いことに遭ったら、あと一秒違えば、あの時ああしていればって思う。それは普通の感情だ。
でも今は今。
俺たちはいま生きていて、俺は乙女ちゃんと一緒にいる。
過去の後悔だって沢山して良い。何一つ忘れなくて良い。
だけど前に進む将来が俺たちにはあることを忘れないで欲しい。
誰かの分まで生きなきゃいけないという意味じゃ無い。
乙女ちゃんには乙女ちゃんの未来がある。
それを自ら無くすようなことはして欲しくないんだ」
「・・・・・・熊さんは、やっぱり大人だね」
熊さんのいうことは正論なんだろう。
大人ならそう割り切れるのだろうか。
でも考えてしまう、熊さんはお姉ちゃんとそんなには過ごしていないからそう思うのではと。
だけど私は違う。自分が生きていた時間と同じ時間、みんなといたのだ。
まだ別れてからの方が遙かに短い。まだまだあの日のことを未練がましく思ってしまう。