乙女と森野熊さん

第四章 乙女、熊さんのお仕事先へ潜入する


去年の夏休み、私が家族を亡くし初めての夏休みということもあって、熊さんが気を遣って遊びに連れて行ってくれた。

私もまだ遠慮している時期だったしまだ熊さんをよくわかっていなかったから、本当は不機嫌なのでは、嫌々なのではと邪推して気疲れした。

段々私の本性が出て、好き勝手言うようになってからのほうがおそらく熊さんも気が楽な気がする。

今年の夏休みは高原にドライブへ行ったり、花火を見に行ったりした。

さすがに旅行に行くのは私と熊さんではまずそうなのか、全て日帰りだったけれど、そもそも旅行に行けるような連続した休みは今年も秋以降になるようだ。

せっかくの一日だけの休みを、私のために使っていることに申し訳ないから断っても、自分の気分転換だと熊さんは私を連れ出した。それが申し訳ないと思いながら嬉しくないわけが無い。

連続した休みを私の夏休みに合わせられないことを熊さんは謝っていたけれど、単にこういう時期は取らないものなのか、人が良くて他に譲っているのかわからない。

それだけ私は熊さんのことを知らないのだろう。

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