乙女と森野熊さん
「熊さんって実は偉い人って事ですか?以前悪い人捕まえたら警察署に連れていかれて、凄く嫌なおっさん警察官に保護者出せとか色々言われて。
仕方なく熊さんに連絡してその警察官と熊さんが話したら、コロッと態度変わったんですがその理由がわからなかったんです」
「そんなことがあったの。せいぜいその人も警部補あたりでしょうし、森野の方が若くても、階級は遙かに上だもの。
警察署の署長なんて警視庁来たらそんなに偉くないわよ?今の森野の階級でなれるけど、どちらかと言えば乙女ちゃんに嫌なこと言ったやつは自分の評価が下がるのが嫌だったのね。嫌な思いさせてごめなさい」
「いえいえ!」
申し訳なさそうに本田さんから謝られつつ、あの日の違和感の謎が解けた。
でも何故こんなに凄い事を隠していたんだろう。
きっと柔道が強いというのはわかっていたし、良く本を読むし、難しいことを話すとは思っていたけれど、一緒に過ごして私はそれを全て含め熊さんをとても尊敬している。
だけどずっと窓際だの、特に何も無い仕事をしているだの、私があまり踏み込めなかったとはいえ自分はたいしたことは無いっていうようにしか私には言わなかった。