乙女と森野熊さん
「警察官はね、あまり細かいことを家族にも話せないの。
それだけ森野は乙女ちゃんが大切だってことはわかってあげてね」
「はい」
フォローするように本田さんが言う言葉に、はいと言いながら心の中ではモヤモヤしっぱなしだ。
だってお姉ちゃんは昔こっそり教えてくれた、熊さんは実は頭が良いのだと。
お姉ちゃんが集めた情報で知ったのかもしれないけれど、きっと熊さんは奥さんになるお姉ちゃんには全て話しているはずだ。
私には話さない沢山のことを。
「これ名刺」
本田さんが名刺入れから私に一枚名刺をくれて受け取る。
「女性同士じゃ無いと話せないことだってあるでしょ?
遠慮無く連絡もらえたら嬉しいわ。ということで乙女ちゃんの情報もちょうだい」
私は笑顔がひきつりそうになりながら、連絡先を交換した。