BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「これ何本?」
「…………」
「おーい。俺のこと、誰だか分かる?」
主任が指を立てた後、私の頬を両手で触れてじっと視線を向けてきた。ぼーっとする意識の中、私の焦点が少しずつ合ってくる。
「うふふっ、かっこいーですね」
「はい?」
「私、あこがれてたんですよ。かっこいいおとこの人と社内恋愛とかー。夜中にまんがでよん……」
ブーブーと振動音。私のポケットの中のスマホが鳴り出した。多分。
「電話鳴ってるよ」
「……わかってますよー。はいもしもしーかえでーす、ふふっ、あはははははは」
「駄目だわこの人……」
大きなため息が聞こえた瞬間、耳に当てていた筈のスマホが目の前の男の人に奪われてしまった。
「すみません、お世話になってます。奈良崎さんの会社の者で山崎と申します。お母様ですか?本日、部署の飲み会がありまして」
「かってに、とらないでよー」
「はいはい、彼女とても酔っ払ってしまいまして……はい、すみません」
取り返そうと手を伸ばすも、届かなくてグイッと離されてしまう。
ふわふわして、彼が電話口で何を話しているか分からない。
「はい、いくよ」
大きな手が私の腕を掴んだ。
引っ張られるよう、よろよろと歩き出す。
なんかよく分からないけど、ぽやぽやする意識の中心地良くて目がトロンとしてくる。
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───────────………
再び夢の中へいってしまった私が、次に目を覚ました時──。
「……さん。そろそろ、起きてよ」
「………」
「朝ごはんだって」
「……うーん、お母さんもうちょっと寝かして」
て、この男の人の声、誰??
慌てて布団から起き上がると、なぜか主任がいる。
「おはよう、奈良崎さん」
「……な、なんで??主任が?」
私の目の前で、山崎主任がにっこりと微笑んだ。