BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~




「やさしい、つよい、かっこいい、せいぎのみーかーたー♪」


仕事から帰ると、リビング希乃愛の歌声が溢れていた。
テレビ画面には録画された覆面ライダーミツキの番組が流れていて。テレビに夢中だった希乃愛がくるりと振り、私の元に走ってきた。



「ママァ、おかえりなさーーい!!」


「希乃愛、ただいま!!」

「えへへへー!こんどねー、ミツキ、くるのー!」

「ミツキって、覆面ライダーのミツキ?」

「ふくめんライダー、ミツキよ!ちょお、かっこいいの!」


希乃愛の目線に合わせてしゃがんで、小さな背中に手を回すと、目を輝かせて声を出す。
覆面ライダー「ミツキ」は男の子向けの戦隊ヒーローもので、この子の大好きな番組だ。



「職場の人に教えて貰ったの。今度の土曜に覆面ライダーのショーが駅前のショッピングセンターでやるから、行ってこようと思って」

「ねー!」


一緒に観ていたのだろうか。ソファに座るお姉ちゃんがいて、希乃愛も嬉しそうに頷いた。
2人の姿を見て、希乃愛が姉に慣れて良かったという思いと、寂しいという思いが混じって少し複雑になる。でも、これでいいんだ。



「えー、そうなの?希乃愛良かったじゃん!」

「とぉっ!やぁっ!!」

「痛っ、ちょっ……希乃愛やめてよ~」

「ママ、たたかいごっこー」

「えー、お腹減ったんだけど」



結局、希乃愛は今の保育園に入所し続けることになった。
姉も自分の性格上、ずっと子供過ごすより働いた方がいいと判断したらしく時短でパートを始めた。社会と離れて不安になってきたとも話してたけど。真面目なお姉ちゃんらしいな、と思う。



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