BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~




「ランドパークかぁ、久しぶりだなぁ。香江ちゃんは最後に行ったのいつ?」


ギアを切り替え、エンジン音を立てて車が走り出した。

恋人同士って車の中でも手を繋ぐものなのだろうか。彼の左手が私の右手をしっかりと握っている。
ちらりと隣を見ると、私の視線に気がついた彼がフッと目を細めた。



「えと……、はい。小さな頃、家族で父と母と姉の4人できたぶりです」

「はは、昔から仲良かったんだね」

「いえ。今はあんな感じですけど、父は以前とても厳しかったんです。アトラクションに並ぶのも好きじゃないし。本当に頑固親父で、怒られてばっかりだったんですよ!!」

「へぇ、想像できないな」

「そうですよね。希乃愛が、希乃愛が来てから凄く変わったんです。全部、あの子のおかげでちゃんと家族に──、」


とここまで言いかけて、希乃愛の顔が頭に過《よぎ》る。


今日、お姉ちゃんと一緒に朝早く出掛けて行った希乃愛。目を輝かせて楽しそうに、「ママ、いってきまーす」と声を弾ませて。

仕事の時は仕方ないと思っていたけど。休日にあの子と離れて過ごすのは初めてだ。
希乃愛が家《うち》に来てからずっと、ずっと一緒にいたから。




「うん、希乃ちゃんは凄いよね。でも、今日はさ、俺のこともいっぱい考えてね」


繋がれた右手を引かれた瞬間。彼の顔が近付いてきて軽いキスが落ちてくるから、一瞬頭がフリーズする。



「ちょっ……、う、運転中ですよ!?」

「ははは、今は赤だから」

「赤でも駄目ですよ!」

「希乃ちゃんのことばかり考えてるとキスしちゃうからね」

「えぇ!?」


私の叫び声が車内に響いた瞬間、クラクションの音が後ろから聞こえて。みっくんが悪戯っ子のように笑って車を発進させた。


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