BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



「えぇ?あぁ、確かに……」


リビングのテレビ画面には、土曜日10時から放送されてる幼児向けの戦隊番組が流れていた。
希乃愛は女の子なのに、男の子向けの戦隊ヒーローものが好きで、「ミツキ」は覆面ライダーの今期シリーズものだ。



「やさしい、つよい、かっこいい、せいぎのみーかーたー♪」

「主任、ごめんなさい…」

「いいよ。小さい子に好かれるなんて嬉しいよ」


その大きな手が希乃愛の頭を優しく撫でる。
にぱっと笑顔を見せるこの子の姿を見て、少しだけ胸が重苦しくなった。





「じゃぁ、奈良崎さん。俺、そろそろ家へ帰るから。希乃ちゃん、バイバイ」


主任のシャツとネクタイは乾燥機にかけられいたので慌ててアイロンをかけた。
ズボンは無事で、上着は母がクリーニングに出しにいったようだ。




「あの、主任。希乃愛のこと、誰にも言わないでくれてありがとうございます。(すっご)く、助かりました」

「うん。奈良崎さんは、母性的で素敵だと思うよ」

「え、……あ、ありがとうございます?」


玄関で靴を履く彼に頭を下げると、真っ直ぐな優しい目を向けられるから。一瞬、その瞳に吸い込まれそうになった。
三浦さんも言ってたけど、甘いマスクってこういう事なんだ。あっぶな…。



「みっくん、またあそびきてー」

「うん、またね」

「あ、主任。ネクタイ曲がってますよ」


思わず伸ばしたその腕をグッと引かれた。




「……希乃ちゃんのこと、他の社員に言わないから"みっくん"って呼んでみて」


距離が一気に縮まって耳元で囁かれる。彼の息と低い声のトーンに心臓が止まるかと思った。


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