BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
8時少し前。部屋にインターフォンが鳴り響いた。画面にはスーツ姿のみっくんが映っていた。
「ふふ、そうよねー。みっくんみたいな男前の人。結婚の1つや2つあっても不思議じゃないわよねぇ」
「いえ、お伝えする順番が遅くなってしまって。今日はご両親のお2人にきちんとお話をと思いまして……」
「なーにかたいこと言ってるのよぉ。私とみっくんの仲じゃなーい?それに、こっちもグイグイしちゃったものね」
なんて、頬を赤らめて話す母。その両手には淡い色をしたバラの花束を抱えられていた。
既視感。前にもこんな場面があったような……。
「みっくーーん、いらっしゃい、おとまりー?」
「はは、お泊まりはしないかな」
「えー、なんでー??」
「話し合いに来たからね」
「はなしあいー?」
パジャマ姿の希乃愛が「きゃー」と走って近付いてきて、みっくんが希乃愛をひょいと持ち上げた時──バタンと家の奥の扉が開いた。
嫌な予感。これ絶対、お父さんじゃん。
「紀乃愛まで手懐けて……お前なんか家に入るな!!早く帰れ!!」
「じーじ?」
眉をつり上げて鼻息を荒くさせる父に、希乃愛がキョトンと首を傾げた。
「希乃愛、そいつから離れろ!」
「えー、なんでー?やぁ」
「ちょっと、お父さんやめてよ」
お父さんが無理やりみっくんから希乃愛を引き離そうとするけど、希乃愛がぎゅっとしがみついている。
「今日は、お義父さんにお話を聞いて頂こうと思って」
「お前のお父さんじゃない!とにかく、希乃愛をおろせ!!」
「もう、お父さん!香江の選んだ人なんだし、いーじゃない?あの婚姻届はまたまた書いちゃったもので、そんなすぐ結婚するわけでもないんだから……」
「たまたま婚姻届を書く奴があるか!?」
お母さんの台詞に父の怒鳴り声が家中に響き渡った。