BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~




「今日はせっかく来て貰ったのに……。本当(ほんっとー)に父が頑固者ですみません」

「はは、大丈夫だよ。それだけ香江ちゃんがお父さんに大切にされてるんだよ」


マンションのエントランス。外はもう真っ暗で、冷たい空気に包まれている。
大きく頭を下げれば、みっくんが目を細めて柔らかく笑った。



「そういうわけじゃないと思います」

「でも、香江ちゃんのお母さんとはちゃんと話せたし。来て良かったよ」


大きな手がふわりと頭に手を乗せられて、その大好きな手が優しく梳かすように頭の天辺から耳、頬まで撫でていく。

手、温かくて気持ちいいな。思わず彼の手を取って自身の頬を擦り寄せると──、腰を屈めたみっくんにキスを1つ落とされる。

冷んやりとした唇が"ちゅっ"と音を立てて離れて、お互いの口元から白い息が漏れる。ふと目が合うと、直後3回続けて軽いキスをされた。




「……あの、ここマンションの入り口なんですけど」

「知ってるよ。駄目?」

「……ダメ、じゃないですけど」

「はは。実は今日、母も挨拶に来たがってたんだけどね。自分にも責任があるって」

「それはやめた方がいいですよ!?」

「うん、分かってるよ。よく言い聞かせておくよ」


あのお母さんなら、ついて来ちゃうんじゃない?という不安は残るものの。
その後、みっくんが仕事帰りに何度も訪ねてくれたけど、父は話し合おうとさえしなかった。

心配だったみっくんのお母さんからは、謝罪と夕食のお誘いメッセージが何件も届いたけど、なにかと理由をつけて断っていた。



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