BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
毎日、パソコンの数字とにらめっこだけど、新しく覚える事も多くて仕事は充実している。時短では無くなったけど、その分と資格手当てでお給料は増えた。月末以外はきっちり定時に帰れるし。
「奈良崎さん、もう上がっていいよ」
「あ、はい。お疲れ様です!」
指導してくれる先輩も優しいし、生活も安定している。
荷物をまとめ、挨拶をして部署を出た。
日が少し落ちて薄暗くなりかけの頃、バスに揺れて家に帰る。
"いつか山崎になるんだし"
みっくんはいつも楽しそうにあんな冗談を言う。
付き合って4年。お互いの両親にも挨拶済み。結婚の話は前に1度出たけど、それ以来その話が真面目に進むことはないのに。
「あっ、おかえり!!」
「希乃愛、ただいまー!!」
マンションに帰ると希乃愛が玄関まで駆けてきた。
この春、希乃愛は小学校に入学した。水色の大きなランドセルを背負うその姿は立派で、とても頼もしくみえる。
まだ、不安で心配なことは多い。けど、こうやって成長していくんだな。希乃愛の笑顔を目にする度に実感する。
「えっ、なにこれ?今日って何かのお祝いだっけ?」
リビングに入ると目に飛び込んできたのは、テーブルに並ぶ豪華な料理。
料理だけじゃなくて部屋の中も飾りつけされていて、折り紙の飾りつ輪っか飾りがカーテンレールにぶら下がって、天井にふわふわとハート型の風船が浮いて、壁には花紙がついている。
誰かの誕生日でもないし、特に何もない日なんだけどな。
「記念日になるんだってー!!」
「記念日になる??」
「うん!プロポーズ記念日だって!!」
「……え?」
「はは、希乃ちゃん、内緒だよって言ったよね?」