BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「お父さん……のサインがある」
「うん、書いて貰ったんだ。香江ちゃんと結婚したいってお願いして、やっと書いてくれたよ」
「…………」
「はは、希乃ちゃんにもちゃんと了解貰ったよ。ね、希乃ちゃん」
「ねー、みっくん!」
大好きな柔らかい声のトーンの横で、希乃愛の楽しそうな声が聞こえてくる。
突然の事でまるで夢みたいで、足元がふわふわして地面についていない感覚におちいっていく。
「香江ちゃん。俺のお嫁さんになってくれるかな?」
「…………」
「駄目?」
持っていた花束に半分顔を隠して甘えるように眉を下げる。
私よりずっと背が高いのに、腰を屈めて覗き込むように首を傾げるからグッと距離が縮まった。
両手で頬を持ち上げられて、目頭が熱いまま視線がぶつかる。
「だ、から……ズルいんですってば」
「うん?」
「だ、駄目な訳ないじゃないですか!よ、よろしくお願いします!!」
そう返事をしてみっくんの腕の中に飛び込んだ瞬間。後ろから"パーン"と音が響いたと同時に、クラッカーのカラフルなテープが飛び散ってきた。
「親の前で抱き合うんじゃない!!」
「まぁ、いいじゃない~お父さん」
「香江、おめでとう!!」
お父さんと、お母さん、お姉ちゃん。予想はしてたけど、みっくんのお母さんも目に涙を溜めて「良かったわ~」と喜んでいる。
シャツの裾をツンと引っ張られた。その先に目を落とすと、エヘヘと得意気に笑う希乃愛がいた。