BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



あんな、母親になんでも報告する男!興味ありません!!

と、喉まで出た台詞を我慢して飲み込んだ。
複雑な心境のまま、主任の方にちらりと目を向けると。すぐに気が付いて、ニコニコとこっちに向けて手を振ってきた。

一体、何を考えてるんだ!?



「ねぇ、こっち手ぇ振ってるんだけど?」

「知りませんよ。三浦さんに振ってるんじゃないですか?久し振り~懐かしいねって」

「えー、私、旦那いるのに。顔面偏差値半端ないんだけど。眼福~」


確かに主任の顔は良い。一緒に出掛けた時も、私もしかして主任のこと好きかも……なんて一瞬だけ思ったのは事実。

だけど、あれはない。なにが、母さんが奈良崎さんを気に入ってるだよ。
あの爽やかで優しい笑顔に騙されるところだった。




「山崎主任ー!あの写真の女の子誰ですか?」

三浦さんが右手を挙げて声を張り上げるから、部署に残ってるメンバーが一気に主任へ視線を向ける。



「あぁ、インスタの?知り合いの子だよ。像の親子の前で撮ると特典を貰えると言われたからね」

「それって知り合いって、女の人ですか?」

「どうだろうね。男同士では動物園は行かないかな」

「えー、それって……」

「ははっ。三浦さん、そろそろ昼休み終わるよ」


なにこの主任の匂わせ発言。それに、三浦さんもやめてよ。もー、ヒヤヒヤするんだけど。

三浦さんが慌ててお弁当を片付けて、自分の部署へと向かう。
主任は午後のスケジュールの準備を始めていく。午後からルート営業が入っていて、営業用の鞄を持ちデスクを立って歩きだす。




「今日の夜、連絡するから」


部署から出る前、私のデスクの前を通り過ぎる時、耳元で小さく囁いた。



< 33 / 179 >

この作品をシェア

pagetop