BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
なんで、わざわざ仕事中に言ってくるかな?
内緒で付き合ってるとかじゃないんだけど!という心の叫びは誰にも響かない。
*****
「みっくーーん!げんきー?」
リビングの部屋に希乃愛の元気な声が響き渡る。
ダニングテーブルの上には母親のスマホ。
その画面にうつるのは、みっくん=山崎主任だ。
「どうぶつえん、たのしかったわねー」
「そうだね」
「また、あそびましょ?」
「いいよ」
動物園に行った次の日。母が遊び半分で主任とのビデオ通話を希乃愛とさせたら、この子が凄く喜んでしまったのだ。
今じゃ泣いてお母さんにねだる始末。
「みっくん、すきー」
「はは、ありがとう」
「あいしてるー、ちゅー」
希乃愛も何言ってるのよ……。
唇を尖らせて画面に近付く希乃愛を見て、盛大な溜め息があふれる。寝る前の恋人同士のおやすみ電話じゃないんだから。
この人マザコン+ロリコンなんじゃないでしょうね?
「希乃愛、もういい加減にしてよ。そろそろ寝る時間だよ!」
「えーーー、もお?」
「ちゃんと寝ないと希乃愛のところにサンタさん来てくれないからね!」
「きゃーサンタさん、くるー」
「ばーばとおしっこしてきて」
「はーい、みっくん、バイバーイ」
「まったくもー!」
走ってリビングを出ていく希乃愛の背中を見て、母親のスマホ画面に向かって口を開いた。
「主任も主任ですよ!希乃愛の言うこと聞き過ぎです!ワガママになったら困るんですけど」
「はは、ごめんごめん。希乃ちゃん可愛いからさ。それに──」
「それに……、どうしたんですか?」
「奈良崎さんの顔も見たかったしね」