BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
ツーツーと、通話終了音が聞こえて、母親のスマホ画面が黒くなった。
呆れた。今から大好きなお母様と夕ご飯ですか。
でも、主任のお母さんも変わってるよね。
少し前の彼の台詞を思い出す。
──奈良崎さんみたいな子が俺のお嫁さんになればいいのにって
──奈良崎さんは、母さんのお気に入りみたいでさ
普通、希乃愛の存在も知っているのに私の事を気に入るだろうか。
ていうか、主任が結婚失敗してたの知らなかったし。失敗同士、と思われたのかな。
考えれば考える程、心の奥がモヤモヤでいっぱいになっていく。
「といれ、したー」
「え、あぁ。希乃愛、うん、寝ようか」
トイレから戻ってきた希乃愛が勢いよく抱きついてきた。
寝室に移動して布団の中に希乃愛を寝せて、その隣に私も横になる。ポンポンと胸の部分を軽く叩きながら、この子に語りかけるよう口を開いた。
「ねーぇ希乃愛。主任はね、毎日遅くまでお仕事してるの」
「しゅにんー?」
「……みっくんはね、お仕事忙しいの。だから、希乃愛が電話しちゃうとゆっくりお休みできないの」
「えー」
「もう、電話しちゃ駄目だからね」
「やだー」
「ヤダじゃない!迷惑なの!」
しまった。自分でも思った以上に大きな声が出た。
目の前の希乃愛の顔がみるみる歪んで、その大きな瞳に涙が浮かんでくるから。慌てて訂正の言葉を追加する。
「えっと、駄目じゃなくて。毎日じゃなきゃいいよ。時々なら……」
「……うぇ、わ、わかった」
「ごめんね、希乃愛。強く言い過ぎた」
「うぅ……」