BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
今にも泣きそうな希乃愛が唇をへの字にしている。
全然、怒るところじゃなかったのに。こんな小さな子に感情的に怒鳴ってしまうなんて。
「ママが悪かったね。ごめん、ごめんね」
「うん、ママ、ぎゅーっ」
寝転がりながら希乃愛の体を抱き締める。
手が温かくなっているから、もう眠いのだろう。
「えっと、寝る前に絵本読もっか」
「……えほん、よむ」
「1冊だけね」
「やったー」
希乃愛が布団から這い出て、枕元に置かれる絵本に手を伸ばす。
うさぎのイラストの描かれた希乃愛のお気に入りの1冊だ。
「希乃愛、この本好きだよねぇ」
「うさぎさんの、あかちゃん。すきー」
さっきまで泣きべそをかいてきたこの子が、にぱっと笑顔になる。
甘えるように胸元に潜り込んで、声を弾ませるからホッとした。
「よんで、よんでー」
「いいよ。……うさぎのあかちゃん。むかし、むかしあるところにうさぎさんのあかちゃんがいました…」
「うさぎさん、えーん、えーんよ」
「そうです、あかちゃんはまいごになってしまったのです」
────……
「うさぎさんは、ほんとうの……」
ページを捲りながら読み進めると、途中で"くーくー"と規則正しい寝息が聞こえてきた。
その小さな頭を撫でて、柔らかい頬に手を触れれば。寝ているのに幸せそうに口角が上がっていく。
楽しい夢でも見ているのだろうか。
「……おやすみ、希乃愛」
可愛くて、愛おしいこの子の幸せを願わずにはいられない──。