BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~




「同期の子と飲み会?行ってきなさいよ。あんた若いんだから、付き合いも大切よ~。社会経験にもなるし。あ、でも、この間みたく飲み過ぎないようにね」


母親のそんな一言から始まった。



*****



「「つーことで、カンパーイ!!」」


グラスを合わせる音が辺りに響き渡った。
小さな居酒屋の席に、同期らしい女の子1人と鈴木さん合わせて2人の男の人が向かい合って座る。



「奈良崎さん、歓送ん時、お酒弱かったですよね?」

「あ、はい。なので今日は一杯だけで……」


ニコニコと子犬のように人懐っこ顔をしているのは、同じ部署の鈴木さんだ。
彼は歓送会で幹事をしていた人で。部署の中で1番若い男の人だと思う。

数日前、鈴木さんに今年入った社員同士の飲み会に声をかけられたのだ。
最初のうちは断っていたのだけど、年の近い同期で飲むなんて楽しそうだなという思いも捨てられず──。
母に聞いたらあっさり了解を得られたのだ。




「前から話したいって思ってたんだー。この同期会、女の子1人でさぁ」


ビールを片手にケラケラと笑い声をあげるのは、開発部の女の子。笹木さんだ。同じ年なのに、大人っぽくてびっくりだ。



「誘って貰えて嬉しいです。笹木さん綺麗で全然同い年にみえません」

「えーーー、同じだし、同期みたいなもんだし、敬語なしでいいよ」

「そうだよー。美人じゃなくて老け顔なだけだろ」

「はぁ?鈴木コロス!」

「ぐえっ」


普段人の良い鈴木さんが毒づけば、笹木さんが身を乗り出して彼のネクタイを思い切り絞める。

こういうノリ、久し振りだな。
笑い声と鈴木さんのギブの声が重なりあって、お酒の力も借りて、ふわふわと楽しくなってくる。





「ねぇ、奈良崎さん。前さー、営業課の山崎主任と噂になってたじゃん?あれってどうなの?」


もう1人の男の人の言葉に一気に酔いが覚めた。



< 39 / 179 >

この作品をシェア

pagetop