BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「同期の子と飲み会?行ってきなさいよ。あんた若いんだから、付き合いも大切よ~。社会経験にもなるし。あ、でも、この間みたく飲み過ぎないようにね」
母親のそんな一言から始まった。
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「「つーことで、カンパーイ!!」」
グラスを合わせる音が辺りに響き渡った。
小さな居酒屋の席に、同期らしい女の子1人と鈴木さん合わせて2人の男の人が向かい合って座る。
「奈良崎さん、歓送ん時、お酒弱かったですよね?」
「あ、はい。なので今日は一杯だけで……」
ニコニコと子犬のように人懐っこ顔をしているのは、同じ部署の鈴木さんだ。
彼は歓送会で幹事をしていた人で。部署の中で1番若い男の人だと思う。
数日前、鈴木さんに今年入った社員同士の飲み会に声をかけられたのだ。
最初のうちは断っていたのだけど、年の近い同期で飲むなんて楽しそうだなという思いも捨てられず──。
母に聞いたらあっさり了解を得られたのだ。
「前から話したいって思ってたんだー。この同期会、女の子1人でさぁ」
ビールを片手にケラケラと笑い声をあげるのは、開発部の女の子。笹木さんだ。同じ年なのに、大人っぽくてびっくりだ。
「誘って貰えて嬉しいです。笹木さん綺麗で全然同い年にみえません」
「えーーー、同じだし、同期みたいなもんだし、敬語なしでいいよ」
「そうだよー。美人じゃなくて老け顔なだけだろ」
「はぁ?鈴木コロス!」
「ぐえっ」
普段人の良い鈴木さんが毒づけば、笹木さんが身を乗り出して彼のネクタイを思い切り絞める。
こういうノリ、久し振りだな。
笑い声と鈴木さんのギブの声が重なりあって、お酒の力も借りて、ふわふわと楽しくなってくる。
「ねぇ、奈良崎さん。前さー、営業課の山崎主任と噂になってたじゃん?あれってどうなの?」
もう1人の男の人の言葉に一気に酔いが覚めた。