BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「すみません!お先、失礼します!!」
部署に戻ると他の社員さんは外回りから殆ど戻っていなかった。
慌てて荷物をまとめる私を見て、隣の鈴木さんが不思議そうに声をかけてきたけど、それどころでは無かった。
定時より前に退社して、バスに乗って、急いでマンションに向かう。
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息を切らして家の扉を開けた。リビングに入ると、放心状態のお母さんが床にしゃがみ込んでいる。
「お母さん!!希乃愛は?」
「……窓が開いてたのよ」
母の指を差す方に顔を向けると、ベランダに続く大きな窓が開かれていた。
そこから外に出れば、足元に希乃愛の靴が1足だけ落ちているのが目に入る。
「ベランダから落ちたのかと思って、下に探しにいったけどいないのよ」
「ここから……落ちた?」
ベランダに踏み台になるような物は置かないようにしていた。椅子も棚も何もないけど。
ベランダの内側に取り付けられた物干し金物に足をかければ──。と、想像してゾッとした。
頭を大きく左右に振ってから、ゆっくりと下を覗き込む。
高い……。3階といっても、高さ10メートルはあるだろう。
木がクッションになってそのまま歩いて出て行ってしまった可能性だってある。
「なんで、ちゃんと希乃愛のこと見てなかったの!?」
「だって、まさかベランダに出るなんて……」
母が両手で顔を覆って声を震わせた。
お母さんを責めたってどうにもならないのに、悪いのは私なのに──。