BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
勘違いの行方不明だったのに。お母さんと私の早とちりだったのに文句1つ言わないで、なんで、この人はこんなにも優しいのだろうか。
「目、赤いね。泣いたの?」
「ちょっと取り乱しちゃって、恥ずかしいです」
「少し、腫れてるね」
穏やかで柔らかくて、 真っ直ぐ向けられる視線。主任の冷たい手が、そっと頬に触れた。
私と反対側には仕事用の鞄が置かれていて、仕事場から直接きてくれた事が分かる。
「……っ、」
そのままくるくると目の上へと移動して、瞼がヒンヤリとした。
冷たくて気持ちがいいけど、距離がいつもより近くて目をパッと離す。
「今、優しくされると、泣いちゃうというか」
「うん?」
頭がぐらぐらする。
今まで気を張って、頑張って築いてきたものが、音をたてて簡単に崩れてしまいそうになる。
「泣いていいんだよ」
「駄目、です」
「奈良崎さんは頑張りやさんだよね。希乃ちゃんの事も、お仕事も本当に一生懸命にやってるよ」
あぁ、駄目だ。
その大きな手に優しく頭を撫でられるから、鼻を啜る音が静かな公園に響き渡る。
「主任、わ、私なんかに何でこんなに優しくしてくれるんですか?こんなの、誰でも勘違いしちゃいますよ……」
「うん、していいよ」
「……っ、」
目の前に主任の優しい笑顔があって、冷たくて柔らかい何かが私の頬に触れた。