BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



恥ずかしさからなのか、お互いに下を向いて無言になる。やけに心臓の音がうるさくて、この静かな時間がとても長く感じる。




「香江ちゃん」


少し時間がたってから、主任が私の"名前"を呼んだ。
冷たい空気の中。柔らかくて、甘くて低い声のトーンが静かな公園に響く。



「は、はい」

「香江ちゃんとずっと一緒にいたいな。一緒に、いてくれる?」

「……は、はい」


「じゃぁ、チューして」

「はぁ?だから、なんでそう」
「してくれないなら、俺からしちゃうけどいい?大人の今夜帰せなくなる濃厚なやつになるけど」

「お、大人!?ちょっ、待って下さい!します!します!させて頂きます!」


主任の顎に手を置いてグイッと上に顔を持ち上げて、右の頬に自身の口を軽くつけた。

男の人なのに、ほっぺたすべすべしてるな。
もう一度頬にキスをしたら、チュッと音が出るから。唇を離すのに名残惜しさを覚えてしまうのは、何でなのかな──?



「うーん、ほっぺただけ?たりないなぁ」

「だけ、です!もう遅いし明日も仕事ですよ。もう、帰らないと……」

「大丈夫だよ」

「駄目です!お、おやすみなさい」


両手を伸ばして無理やり主任との距離を取ると、「えーどうして?俺はもっと一緒にいたいんだけど」と不満そうに駄々を捏ねる大きな男の人がいた。



「また、明日会えるじゃないですか。み、みっくん、おやすみなさい!」



< 56 / 179 >

この作品をシェア

pagetop