BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



昨日の夜は、なかなか寝付けなかった。

はっきりと告白をされた訳じゃないし、おつき合いをする事になったか曖昧のままだけど。
やっぱり職場では気まずいし恥ずかしいし、内緒にするよね。


"香江ちゃん"と私の名前を呼ぶ低くて甘い声のトーンが、まだ耳に心地好く残っている。

骨ばった男の人の大きな手の関節。長い指。
外だったからかな。主任の唇、冷たかったな。


私、昨日あの人とキスをしたんだ──。



*****




「ねぇ!!奈良崎さん!うちの課の女の子が噂してたんだけど本当なの??」


昼休み。お弁当を広げようとしたところで、三浦さんが勢いよく部署の扉を開けてきた。

希乃愛の事は、いつかは彼女の耳に入るだろうと思っていたけれど、想像以上に早かったな。



「はい、あの、黙っててすみませんでした」


仕事を教えて貰ったり、凄くお世話になっていたのに。子供の存在を噂という形で知られてしまったのは申し訳ないと思う。
だけど、三浦さんがズカズカと営業課に入ってきて、続けられる台詞は予想外のものだった。




「まさか、山崎主任と付き合ってるなんて!!」

「は?」


息を切らす彼女が続ける言葉に、一瞬耳を疑う。



「食事に誘ったら彼女いるからって断られたって……。営業事務に入った奈良崎さんだって言われたって、今の部署の子が騒いでたんだけど!!」

「…………!?」



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