BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~



「は?いや、つ、付き合って……」

「キスしたのに?」

「……っ!?」


向かい合って立つ主任が少しだけ体を傾けて、距離を縮めてくる。

"キス"という単語と昨日のできごとが繋がるまで、少し時間がかかって。彼の冷たい唇の温度まで鮮明に頭に思い浮かぶから、自身の頬がかぁーーーと熱を持ってく。



「香江ちゃんは、俺のこと嫌いなのかな?」


ゆっくりとスローモーションに彼の手が近付いて頬に触れる。
昨日の公園の時とは違って温かい手。指がくるくると撫でるように移動して、私の唇に人差し指を当てた。



「き、嫌いなら、…キスなんてさせません(小声」

「じゃぁ、俺のこと好き?ねぇ、好きって言ってよ」

「………うぁっ。はい、……好きです」


恥ずかしくて目を瞑ると、「よく言えたね」と今度は頭をよしよしと撫でてくる。
なにこれ、心臓がいくつあっても足りないんですけど!?



「なんで隠す必要があるの?別に仕事は関係ないと思うよ」

「でも、だって…恥ずかしいじゃないですか。もしかして、移動とかあるかもしれないし」

「ははは、会社(うち)は無いよ。部長の奥さんだって同じ部署(営業課)だったし。そっか、部署離れたら寂しい?」


胸がドキドキする。頭がくらくらする。
体全体が大きく脈打って、まるで指の先にまで心臓があるみたい。



「そっか、秘密の社内恋愛の方が良かったかな?」

「そういうワケでは……」
「でもさー俺、心配なんだよ。香江ちゃんこんなにも魅力的だから」


眉を下げてシュンとする主任が、私の背中にふわりと手を回した。

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