BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
主任の車が停車してある駐車場で、車が見えなくなるまで希乃愛と見送った。
「みっくん、バーイバーイ!!」
希乃愛の大きな声が辺りに響き渡るから、近所迷惑にならないか少し心配になる。
この子ったら、いつまでも大きく手を振ってるんだから。
「じゃぁ、帰って朝ごはんにしよっか?」
「えー、ののあ、パンケーキ!!」
「いーよ。ママ、お仕事お休みだから。ふわふわの焼いねあげるね」
希乃愛はさっき起きたばかりで、ご飯も食べずに寝巻きのまま出てきてたのだ。
小さな手を取ってマンションに戻ろうと足を引き返した時──、
「………の、希乃愛…!」
この子の名前を呼ぶ声が後ろから耳に入った。
それは、よく知っている声で振り向かなくても誰だか分かる。
その人が私達の目の前でしゃがみ込み、希乃愛をグッと強く抱き締めた。その反動で、繋いでいた筈の私と希乃愛の手がするりと離れてしまう。
「だ、だぁれ??」
「希乃愛……、ずっと会いたかった…」
「やーだ、こわいっ、やー」
希乃愛が泣きそうになりながら私に視線を向けてくるけど、唖然と立ち尽くしたまま動くことができない。
「香江も、久しぶり……。元気だった?」
2年前。突然帰ってきて、突然いなくなった、希乃愛の本当の母親──。
この女の人は、私の4つ上のお姉ちゃんだ。