BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
噂をされているのは分かってたけど、生の声で聞くなんて最悪。
でも、今トイレの個室から出ていく勇気はなくて、この人達が出ていくのを待つしかない。
「その営業課の子、あざといんじゃね?」
「でも、そんな感じの子じゃなかったけどなぁ」
繰り広げられる話し声の中、聞き覚えのある声が混じっているのに気が付いた。
この女の子の声、どこかで聞いたことがある。
鈴木くんと飲んだ時に一緒だった笹木さんだ。
「本当 人は見かけによらないよね。前に一緒に同期会やった子なんだけど。まさかねぇ。それで年上の男の人でしょ?ヤること早い人は手ぇ出すのも早過ぎー」
楽しそうに続けられる言葉に、頭をガツンと殴られた衝撃を受けた。
飲み会の後、顔を合わせるとにこにこ手を振ってくれたのに。笑顔の裏でそんなこと思ってたんだ。
希乃愛との関係は事実じゃないし、今までだって好き勝手言われてきた。けど、聞かなきゃ良かった。
結局、彼女達が出て行った後もすぐ動くことが出来なくて、昼休みが終わり10分が経過してから部署へと戻った。
珍しく営業に行かない主任がやたら話しかけてきたけど、全部うろ覚えだ。頭がぼーっとして、書類ミスも連発して全然仕事にならなかった。