BABY主任は甘やかされたい~秘密の子育てしています~
「香江、やめなさい」
お母さんが静かに低い声を出したけど、もう止まらなかった。
「なんなのコイツ、本当は私がママなのに!ママなんて呼ばせてんじゃないわよ!って思ったんでしょ!?なんで今なの?戻ってくるならもっと早く来てよ!!」
「香江の気持ちは分かるけど、もう少し静かに……」
「お母さんに言ってるんじゃないし!お姉ちゃんに聞いてるんだし!!」
テーブルに両手を思い切りついて立ち上がって、部屋に大きな声が響き渡る。
全身が震えた。泣くのを我慢して唇をグッと噛みしめる。
「……か、香江には凄く感謝してるの。希乃愛に愛情を注いでここまで育ててくれて、希乃愛の為にこんなに怒ってくれて本当にありがとう」
傷付いたような表情を見せる姉が、小さな息を吐き出すように震える声を出した。
「ありがとうって何?謝れば……感謝すれば、それで許されるの?希乃愛のこと置いてったくせに………や、だよ」
これじゃ、まるで私が駄々を捏ねてるみたいだ。
正直、姉を責める気持ちより、あの子を手離したくない気持ちの方が遥かに上回っていたと思う。
「私は叩いたことない……。私は希乃愛のこと、叩いたことない。あんな小さくて可愛い子を手にかけたこと、1度だってないっ!!姉ちゃんは──っ、」