煩悩過多なイケメンは私に一目惚れしたようです【マンガシナリオ】
第3話 初対面にそれはないんじゃ?

○教室 帰りのホームルームが終わった頃。
 帰る生徒や、部活に行く生徒などが教室を出ていき、人はまばらだ。

真尋「如月さ──」
田崎「おーい、御厨。ちょっといいか」

 鞄を持ち、千華に話しかけようとした所で、担任の田崎が真尋を呼ぶ。
 しかし、一向に千華から視線を外さない真尋。

田崎「聞こえてるかー、御厨ー」
千華「御厨くん。先生が呼んでるよ?」

 そう千華が言えば、真尋はどよ〜んとしたオーラを背に答える。

真尋「……すみません、すぐにアレを片付けてくるので待っていてくれますか? 送ります」
千華「う、うん」
田崎「え、今先生のことアレって言った?」

 渋々と言った様子で教卓に向かい、田崎の前に行くとムスッとした様子で「なんですか」と言う真尋。

田崎「……いや俺の聞き間違いだよな、うん。よし、本題だが──」

千華(外で待っておこうかな)

 田崎と真尋が話しているのを横目に、千華は教室を出る。
 廊下を歩き、千華が曲がり角に差し掛かった瞬間。下の階から誰かが、凄い勢いで階段を駆け上がってきて千華とぶつかった。

千華「きゃっ!」
玲那「わあっ!?」

 ぶつかってきた人物は玲那だ。
 玲那は勢いを殺せずに、千華へとぶつかるように抱きついた。

千華「……だ、大丈夫? 名取さん」

 千華の胸元に顔を埋めて、動かない玲那へ声をかける。ガバッッと顔を上げた玲那は、涙目だ。
 
玲那「ごめんねっ如月さん! け、怪我はない!? あたし責任取るからね、うわーん!!」

 捲し立てるように、謝罪の言葉を並べた玲那に、千華は目をパチクリとさせた。

千華「私は大丈夫だから、そんなに謝らないでっ名取さん」

 ずび、と鼻をすすった玲那は「本当?」と上目遣いに千華を見る。
 目が大きく可愛らしい女の子の玲那に、千華は「か、可愛いっっ」とときめく。

千華「うん。本当だよ」
玲那「よかったぁぁぁあ。如月さんの骨が折れちゃったかと思った」
千華「そんな、大袈裟な……」
玲那「あたしよくお母さんに、『あんたはガサツなんだから気をつけなさい』って言われててね」

 まぁまぁ太い枝でもパキッと折っちゃうんだ、と言った玲那にぶるりと震えた千華。

千華(それはガサツじゃなくて、力が強いだけじゃ……?)
千華「名取さんこそ、大丈夫? 怪我はない?」
玲那「あたしはむしろ、元気が有り余ってくるくらいだよ!」

 ほら! と力こぶ(実際には無いが)を見せつけるように、両腕を曲げた玲那。

千華「ふふっ、本当だね」
玲那「……あ、そうだ!」
千華「ん?」
玲那「如月さん。よかったら今度、お昼一緒に食べない? せっかくこの間お友達になれたから、お話ししたいなぁって思ってて──」
千華「えっ?」
玲那「へ?」

 お互いの間に、妙な空気が流れる。
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