煩悩過多なイケメンは私に一目惚れしたようです【マンガシナリオ】

千華(ひゃあっ!?)
千華「ななな何してるの御厨くん! 離してっ」
真尋「いひゃへふ(嫌です)」

 指を咥えながら喋る真尋。
 喋るたびに、指が上下に揺れた。
 イケメンが私の指を咥えているとか、なんのプレイをしてるんだ……! と千華は視覚の暴力を受けていた。

千華(どう言えば、御厨くんは指を離してくれるのっ!?)
(…………そ、そうだ)

 正常な判断ができなくなった千華は、通常なら絶対言わないような事を口走ってしまった。

千華「ゆ、指を離してくれないとっ、御厨くんとの『お付き合いは永久にお断り』するからね!?」

 だから指を離して〜!! と目をつぶり叫んだ千華。
 真尋には、ガーン! と雷に打たれたような描写。
 衝撃からなのか、パカリとおもむろに口を開いた真尋。千華はすぐさま指を抜く。

千華(よかった……!)
(帰ってきた私の指!!)

 人差し指を見て泣く千華。
 しばらくして、ん? と真尋が無言な事に気づく。真尋はパカリと口を開けたまま、固まっていた。

千華「御厨くん?」
真尋「……」
千華「おーい」

 目の前で手を振るが、無反応な真尋。

真尋「……だ。き……つ……なら……です」
千華「なにか言った?」

 急に立ち上がった真尋に、ビクッと肩が跳ねる千華。
 恐る恐る真尋を見上げた千華。
 真尋の目は据わっていた。

千華「御厨くん……?」
真尋「──嫌だ。如月さんと付き合えないのなら、死んだ方がましです」

 真尋はそう言うと後ろにある、屋上へと出る扉のドアノブに手をかけた。

千華「まま待って御厨くん!? なにしてるのっ」

 力一杯、真尋の制服の裾を引っ張り止める千華。
 その間にも真尋は、ガチャガチャとドアノブをまわす。
 けれど鍵がかかっているのか、中々開かない。

真尋「くっ、なんで鍵が閉まってるんだ。誰ですか、鍵を閉めたのはっ」
千華「強いて言うなら、見回りの先生だと思うけどっ」

 ぐぬぬっと真尋を引っ張り続ける千華。
 真尋は突然、くるりと千華に向きなおる。体勢を崩した千華だが、腰に腕を回され倒れずにすんだ。
 間近にある真尋の顔にドキリとしながらも、千華はほっと胸を撫でおろす。

千華「良かった、御厨くん屋上に行くのは諦め──」
真尋「鍵をもらいに行ってきます」

 ギラリと鋭い眼光の真尋。
 ブチリ、と千華のナニカが切れた音がした。

千華「御厨くんの馬鹿!」

 急に罵倒され、きょとんとした顔になる真尋。

真尋「如月、さん?」
千華「私言ったよね! 指を離してくれないと、その、お、お付き合いを永久にお断りって」
真尋「はい。だから、付き合えないなら死んだ方がましと……」
千華「だから!」
千華「『離してくれないと』って言ったでしょ……。離してくれたから、別に永久にってワケじゃ……」

 顔を赤くし、最後の方にいくにつれて声が小さくなっていく千華。
 言い終わると、本人が狙ったわけじゃないが上目遣いに真尋を見た。

真尋「──ズルいです、如月さん」

 ぎゅううぅぅと、強く千華を抱きしめた真尋。

千華「ひゃあっ? は、離して御厨くん!」

 バシバシと背中を叩き暴れる千華。
 けれど、それすら嬉しいと言わんばかりに、さらにぎゅっと拘束を強くされた。

千華(うぐっ!)
真尋「今回は離しません」
千華(そ、そんな〜〜!!)
< 13 / 27 >

この作品をシェア

pagetop