煩悩過多なイケメンは私に一目惚れしたようです【マンガシナリオ】
○放課後。校門前

真尋「如月さん、送ります」
千華「あれ。御厨くん、こっち方向なの?」

 校門を出て、向かって右側を指さす千華。そっちは千華の家がある方向だ。

真尋「いえ、真逆ですが大丈夫です」
千華「全然大丈夫じゃないよね? やっぱり、送らなくていいよっ」
真尋「いいえ送ります。危ないですから」

 あなたといる方が危険では? と言いたいのを、ぐっと堪えた千華。
 断固として譲らない真尋に折れた千華は、渋々真尋と歩き出した。


 いつも通る帰り道。途中に公園がある。
 なにげなく、公園で遊ぶ子供に目を向けた千華。

 ワンピースを着た五歳くらいの女の子は、大きな木の前で上を見上げている。
 つられて千華も見れば、真っ赤な風船が木に引っかかっていた。

千華(うーん、あれはさすがに私じゃ届かない)

 千華が「ごめんね」と心の中で謝っていると、千華と同じ制服を着た女子高校生が、子供に近づき何やらはなしている。

千華(……あれ? たしか同じクラスの──)

 女子高校生……名取玲那(なとりれな)は、えいやっ! と木にしがみつきスススッと登っていく。
玲那:大きな目に可愛らしい顔。肩くらいの髪を下の方で左右に結んでいる。

千華(わっ木に登った!)
(大丈夫かな?)
(お、落ちちゃったらどうしよう)

 立ち止まり、ハラハラしながら見ている千華。玲那は風船の紐をしっかりと握り「とうっ」と下りた。
 女の子に風船をあげると、その子はお礼を言って走っていく。ホッとする千華。

千華(よかった……)
真尋「──何見てるんですか? 如月さん」

 後ろからするりと伸びてきた腕は、千華を拘束する。真尋が後ろから抱きしめてきた。
 耳元で、真尋の声が千華の鼓膜を揺らす。

千華「みみみ御厨くん!? ち、近い!」
真尋「すっぽり収まるサイズで可愛いですね、如月さん」
千華「話を聞いてーー!」

 すりっ、と頭に頬を擦り寄せてくる真尋。真っ赤な顔の千華は、こちらを見ていた玲那と目があった。
 玲那は、はわわと目元を手で覆っているが、指の隙間からガッツリ千華達を見ている。

玲那「お、お熱いですねぇ、お二人さん!」

 ぐへへ、と若干おじさんのような反応をする玲那。

千華(お熱い!?)

 玲那の言葉に、ペリッと真尋を引き剥がして距離を取る千華。
 その間にトトトッとこちらに走ってきた玲那は、興奮気味に千華達へ問いかけた。

玲那「御厨真尋くんと、如月千華ちゃん! だよね?」
千華「う、うん」
玲那「私、名取玲那! って同じクラスだから知ってるか」

 えへへ、と笑う玲那に、千華は内心焦る。

千華(「ごめんなさい、覚えてなかった」なんて言えないっ!!)
(どれだけ私は、クラスメイト達に興味なかったんだってなるよね……!)
(実際、御厨くんの名前しか覚えてなかったし)
(いや、あんなに私を見つめてくる人は逆に、不審すぎて覚えるしかないと思うの)

 うんそうだよね。
 と、自分で納得し解決した千華。

真尋「いや、俺は知らなかったです。如月さんしか興味なかったから」
千華「御厨くん、何を言ってるのかなっっ」

 無表情で淡々と言う真尋に、千華は玲那へとフォローを入れる。

千華「ご、ごめんね名取さん。御厨くん、たまにおかしな事を言うから気にしないで!」
玲那「そうなの? ま、私は気にしてないからいいよ!」

 ワハハ、と腰に手を当て明るく笑う玲那。

千華(この子、笑い方が豪快ッ)
玲那「はっ! 私急いでたんだった! じゃあね二人ともっ、また明日!」

 そう言って、全速力で走っていく玲那の背中を見つめる千華。

千華(な、なんだかパワフルな人だな名取さん)
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