Ray -木漏レ日ノ道へ-
「いや私こそ、なんかごめんね」

「君は悪くないでしょ。それより、一日遅れちゃったけど誕生日プレゼントに欲しい物ないの?」

レイくんと一緒にいられたらそれでいい。
そう即答した私に彼は目を丸くした。

「珍しく素直だね」

「たまには可愛いこと言わないと他所の子のとこに行っちゃうかもしれないから」

「あ、いつもの朱里さんだった」

軽口を叩き合いながら支度をして、昼前になるとすっかり雪はやみ太陽が顔を覗かせていた。

駅前で先に昼食を軽く済ませる。
その後、いつの間にか彼が購入してくれていたバレッタをサプライズで渡されて気分は更に高揚した。

まるで繊細なガラス細工のようなポインセチアのそれは、太陽光を受けてきらきらと私の髪を飾った。

「時間も時間だし、そろそろ向かおうか。オレの友達のところ」

「レイくんの友達?」

今日の彼の目的はその友人に会うことだったのだろう。
彼に友人とは初耳だった。

いや、これだけ容姿が優れていれば、友人どころか恋人が他にいたとしても不思議ではないのだが。

「その人に私を紹介してくれるの?」

「うん──いや、違うな。朱里さんにその人を紹介したい……なんて言ったらおこがましいかな」

言っていることがよくわからず首を傾げる私に、来ればわかるよと彼は私の手を引いたのだった。

途中立ち寄ったコンビニで缶酎ハイを購入して、その先にある花屋で小さめの花束を作って貰う。

ついこの間、私が辿った道を彼に同じように先導されていることに気づいて次第に口数が減っていった。

やがて見えてきた古い美術館へ入るわけもなく、そこを通り過ぎて丘を登った先には墓地が広がっている。

「……この先は君のほうが詳しいよね」

私は彼に小さく頷くと、無言でその場所へと歩みを進めた。
他に人気はなく、鳥のさえずりと私たちの足音だけが響いていた。

「──光琉が君の弟なんだって、この間この場所に君が現れて初めて知ったんだ」

以前の私と同じように、彼は袋から取り出した缶酎ハイと花を供えた。

「あの日、私より先に来てたってこと?」

「そう。君の姿に気づいて咄嗟に隠れてたけど」

屈んで花のバランスを調整し終えた彼は墓石を見つめていた。

「聞いてもいい? レイくんの子供姿が光琉と同じなの、なんで……?」

「そういえば、まだ言ってなかったね」

彼は一呼吸置くと、今まで聞いたことのない震えるような細い声でその先を続けた。

「オレたちヴァンパイアはね、過去に血をくれた相手と同じ姿になれるんだ」
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