彼氏がふたり
あの後、自己嫌悪に陥って廊下で動けなくなっていた私に気が付いて、彼が手を差し伸べてくれた。
周りは「女王だー」なんて騒いでいたけどそんなのも彼は気にしていなかった。
「だから、ちょうだい。少しでいいから唯斗くんといたい」
「やるわけねーだろ。唯斗は俺のだ」
唇を尖らせて訴えれば、壮真が目を細めてフッと笑う。
一瞬目を疑った。いつもムスッしてるくせに、笑うこと出来るんだ。
「そ、壮真は男の人が好きなの?女の子は好きにならないの?」
「美麻のお姉さんは、女が好きなのか?」
「知らない。そんな話したことないし聞きたくない」
「……そうか」
お互いに暗い声のトーンが続いた後、沈黙ができる。といっても、テレビの音声は空気を読まず流れているけど。
先に口を開いたのは私の方だった。
「ねぇ、女の子の裸観ててもつまんないでしょ?怖いの観よう?」
画面には卑猥な音ととにモザイクシーンが表示されている。私も壮真も好きじゃないのなら、再生させておく理由なんてない。
停止ボタンを押してDVDを取り出し、もう1つの怖い方のDVDを入れ直す。
「おい、勝手に何をやってる?」
「えー、だってぇ。怖い方が面白そーじゃん」
いかにもホラーといった画面が表示されると、壮真の声にならない叫びが部屋に響き渡った。