彼氏がふたり B
彼氏の浮気
「ねぇ、壮真ぁ。一緒にお昼ごはん食べよぉ」
猫撫で声を出して壮真の膝の上にちょこんと座ると、教室の中がザワザワとどよめき出し一気に注目を浴びる。
「……暑い」
異性の恋人同士の距離が分からない(らしい)壮真。
眉間に皺を寄せ文句を口にするも、私を無理やり膝から下ろさないのは、唯斗くんに"距離を教えて貰うよう"言われたからだろう。
もちろん、彼はすぐ前の席に座っていて、満足そうに私達に顔を向けている。
「卵焼き食べる?はい、あーん」
「……」
「美味しい?」
「……甘い」
「壮真のおにぎりも一口ちょうだい?」
「……」
教室の中でイチャイチャするカップルは大嫌い。視界に入るだけでキモイ。けど、これは周りに見せしめる演技だから。あと数日で夏休みだし。
不機嫌そうに仕方なく口を開ける壮真も見ていて面白いし。何より唯斗くんと一緒に過ごせる事が何よりも嬉しくて、にんまりと口元を緩む。
朝はおはようのハグ。昼休みは膝の上でお昼ご飯の食べさせ合い。放課後は手繋ぎで仲良く下校する。
壮真と私は、順調に校内ラブラブの彼氏彼女になっている──。