彼氏がふたり





「ほら、早く見失っちゃうよ」

「何で俺が…」


家を出て駅方面に向かえば、すぐに唯斗くんの姿を確認出来る。
夜の駅前通り。ネオンの光と賑わう人々の中、存在感のある彼は一際目立っていた。

壮真の部屋にあった帽子を借りて、人混みに紛れながら唯斗くんの後をつけると。小さなバーみたいなお店の中に入っていく姿が見えた。



「壮真、私達も入ろう?」

「駄目だ。見つかる」

「でも、中で女の子と待ち合わせしてるかもしれないじゃ……」


カランカランと音がして、お店の扉が開いた。壮真が私の手を引いて柱の影に身を潜めようとしたけれど、扉から出てきた唯斗くんとばっちりと目が合った。

しまった。早速、見付かった……。



「あれー、壮真と美麻ちゃん。何やってるの?」


唯斗くんが穏やかな笑みを浮かべ、陽気な声のトーンを落とす。



「この子達、(だぁれ)?」

「ん、同じ学校の友達。この2人付き合ってるんだよー」


派手な髪色をした女の人が甘い声を出すと、唯斗くんが悪びれもなくケロリと答えるから。本当に浮気なのか、遊んでるだけなのか分からなくなる。




「あ、そうだ。一緒にホテル行く?交換してヤってみるの興味ない?」

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