彼氏がふたり
笑顔の台詞に驚いて声も出なかった。
恐る恐る隣を見上げると、いつも無表情のこいつが眉を下げ瞳を曇らせているから。明らかに傷付いているのが伝わってきた。
「な、何で?行っちゃったじゃん。どうして止めないの?」
「美麻こそ固まってただろ」
「いや、だってあんな……堂々とさぁ」
唯斗くんは憧れだった筈なのに、彼を知れば知る程、頭がついていかなくて混乱する。
「ショックなら手をひけ。アイツはああいう奴だ」
気持ち悪い、触るな。冷たい声。振り払った手。
理解してあげたいのに、認めてあげたいのに、拒否反応しか示せない。私の罪の意識、せめてもの懺悔から始まったもの。
「ただ付き合うだけじゃ駄目だ。相手の嫉妬心を駆り立てるのが唯斗の性癖。俺に他の男と付き合わせようとしたり、美麻とだって接触させたがる。それを見て内心興奮してるんだろう」
「なにそれ」
「だから、お前には手におえない」
「はぁ?壮真には手におえるっていうの?」
「おえない。アイツがつまらないと判断したら切られるだろうな」
壮真が諦めたように淡々と口を開くから、心の奥底からモヤモヤが広がっていく。
「……分かった。それじゃぁ協力してあげる。ねぇ、私とあんたで唯斗くん繋ぎ止めてみない?」
本当は分からない。唯斗くんの性癖も、壮真の同性が好きっていう性的指向も全然理解できないけど──。