彼氏がふたり
花倉 美麻、高校2年生。17歳。経験無しの処女。
経験豊富でもなんでもない。男の子となんか殆ど遊んだ事ないし。しいて言えば、中学の時1つ上の先輩と2週間、去年バイト先の大学生と3日間だけ付き合った。
そう。少し派手な顔とこの見栄っ張りな性格もあり、"経験豊富"というイメージが張り付いてしまっただけなのだ。
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「花倉さん、新規のお客さんくるからご案内入って」
「……はーい」
放課後は彼氏とデートじゃなくて、ほぼファミレスのバイト。バイトを入れてないと合コンに連れていかれるという理由もあるけど。真面目な勤労少女だ。
カウンターからメニュー表を手に取って入り口に立った。
入り口から入ってきたのは違う高校の男子グループで、ニコッと笑って席まで案内すれば男共が"ヤベー"とか言って頬を赤らめてるのが分かる。
ちょっと笑顔を見せれば大体の男は意識してくれるのに、どうして上手くいかなかったのだろう。
本当は、手を差し伸べてくれたあの日から彼の事がずっと欲しかった。
渡瀬 唯斗くんは同じクラスの男の子。
誰にでも平等に優しくて、穏やかで、サラサラの黒髪に爽やかな表情で"王子様"なんて陰で呼ばれている。
私なんて"経験豊富"の"女王様"だ。処女なのに。