彼氏がふたり
「八巻くんはさ、美麻と付き合ってどう?可愛い?」
「……あぁ??」
突然の利香の台詞にギョッとしたけど。壮真も壮真で眉間に皺を寄せて口ごもるから、嘘でも可愛いって言えよ!と思わずにはいられない。
それをフォローするように唯斗くんが爽やかに口を開いた。
「壮真、美麻ちゃんのこと可愛いって言ってたじゃん。ほら、ここは彼氏として言ってあげないと」
「そうだぞ。お前口下手そうだけど、ちゃんと言葉で伝えないと美麻に逃げられるぞ」
「…………美麻は可愛い」
「きゃーーー、八巻くんってそういう台詞はくんだ!?」
壮真くんと穂波に誘導されるまま、壮真ぁ表情も何一つ変えず"可愛い"なんて言葉を口にする。
利香も楽しそうにキャッキャッと声を出すけど、あんたが言わせたんでしょうが。
頬を膨らませてムスッとしてると、隣に座る壮真が不思議そうに覗き込んできた。
「美麻、なんで怒ってるんだ?」
「だって、皆に言わされた感が半端ないじゃん」
「八巻、女心分かってないなー。キスでもしてご機嫌取っとけよ!」
なんて、穂波がケラケラと笑った次の瞬間──。
頬にグイッと手を添えられて、"ちゅっ"と軽いキスが落とされる。
壮真の冷たくて薄い唇が、一瞬だけ確かに触れた。