彼氏がふたり
Tシャツに染み込んだ汗の匂い。
大きな腕の中。お互いの心臓の音が重なって全身に響きわたる。
「壮真、汗くさっ」
「うるさい。お前も風呂入ってないだろう」
背中に回された手は痛い位に強くて乱暴なものなのに。ずっとこのままでいたいと、ゆっくりと目を閉じたその時──。
ガチャッと音を立てて玄関の扉が開くから、パッと壮真から体を離した。
「忘れものし……て、へーぇ。2人で何やってんのー?」
玄関には私達を見下ろす唯斗くんがいて。一瞬見開かれた瞳がすぐに穏やかなものに変化していく。
「俺に隠れて2人でイチャついてたんだー?」
なんて、唯斗くんがにっこりと口許を緩め、靴も脱がずに近付いてくる。
「彼女との距離感を教わっていた」
「そういうのはさー、俺の前でやれよ」
目の前にしゃがみ込んだ唯斗くんが、壮真の頬を乱暴に潰して軽いフレンチなキスを落とした。
2人のキスシーンは前にも見た筈なのに、現実味がなくて頭がクラクラする。
「ふはっ。俺さ、壮真が女と……美麻ちゃんとヤッてるの見たいなー」
唯斗くんの言う事は何でも従っていたけど、今回ばかりは壮真の返事はない。