彼氏がふたり B
信じらんない。この人、何言ってんの?
ネジ1本ぶっ飛んで頭が狂ってるのだろうか──。
「あ、大丈夫だいじょーぶ。壮真もそれ知ってるから。知ってて俺から離れられないんだよ」
「……ひ、ひどい。唯斗くんがそんな人だなんて思わなかった」
「そうやって理想押し付けられもねー」
「そ、壮真が可哀想じゃん」
「何?壮真の味方なの?あいつマジで可愛いよねー。俺の為なら何でもやってくれるし、あんな図体してすぐ泣きそうになるしさ」
「それは、壮真が唯斗くんの事が好きだから」
「応援してあげたくなっちゃった?俺に酷いことされたら慰めてポイント稼げば?」
「……ッ、」
「それにさー、美麻ちゃん見たことないだろうけど。イク時の顔、すっげマヌケ面になるんだよ。あー、でも俺も壮真のこと愛してるからさー今はね」
唯斗くんが、世間話でもするかのようにニコニコと言葉を続けていくけど。私の腕を握る手の力が一気に強くなるから、振りほどくことが出来ない。
陽射しが容赦なく私達の頭上を照らす。
ぐにゃり。夏の暑さにやられたのか彼も空気も歪んで見える気がした。
──アイツがつまらないと判断したら切られるだろうな──
あの部屋で、壮真が諦めたように淡々と口にした台詞が脳裏に過った。