彼氏がふたり



「……あぁ??」

「うっ、く……」


壮真の抜けた声が耳に入るけど、涙は止まらなくて手で拭ってもどんどん溢れるばかり。




「な、んで俺?いや、(わる)……ん?」


"悪い"と謝ろうとした壮真の台詞を遮って、両頬を掴んで無理やり唇を押し付ける。
涙でぐしゃぐしゃになった瞳でも、壮真の目が大きく見開いているのが分かった。

そのままバランスを崩して後ろに倒れる壮真の上に跨いだまま、その冷たくて薄い唇にキスを落としていく。




「ね、ねぇ。壮真、わ、私のこと嫌いじゃないよねぇ?」

「嫌いではない」


啄むように顔全体に何度も口付けるも、壮真は微動たりともしない。
壮真なら私の事なんて簡単に引き剥がせるのに……。



「じゃぁ、唯斗くんと別れてよ」

「無理だ」


結局答えは堂々巡り。胸が痛い。
どんなにお願いしても壮真の答えは変わらないんだ。



「もっと、凄いキスしていい?」

「……別に構わない」


でも、私のキスも拒否をしない。
むしろ、口を開けて舌の侵入まで許してくれるんだけど。

壮真は私を拒まない。女だけど嫌いではないから。
眉を下げて情けない壮真がこんなにも愛おしいのに、もっと壮真を知りたいと思うのに、きっとこの恋は叶わないのだろう。


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